良く晴れていた。 疑う余地も無い青い空。すっと心地よい風が馬車の窓に入り込みテンの前髪を揺らした。 「気持ちいいね」 遠くに鮮やかな緑をした山々が連なり、いっそう青が際立っている。 こんなにも美しい景色を見る事が出来た。 沢山の思い出を作れた。 とても、良い旅だった。 「良く晴れた空か。物語の終わりにはぴったりな感じだ」 つくねは目を閉じ、静かに座っている。石も黙っていた。 「やはりハッピーエンドというのはいいものだよ、ねぇ?」 テンはポケットの中に手を入れた。 「願いを叶えてくれる石を、この世から消すことだ―――」 はっきりとした口調でテンは石にそう言った。 雨はもう止んでいたようで、そこには本当の静寂が流れているのだった。 その沈黙を早く破ってほしいとも思ったけれど その沈黙が永久に続けばいいとも思った。 「「テン」」 「――――」 「「テンは本当に頭がいい」」 「「それで良いのです」」 「!」 「「大丈夫。あなたはジョアさんとは違います。現にこの願いこそが彼との大きな違いでしょう」」 「あ……あぁっあ」 テンは重大な事に気付いた。 石を呼び止めたかった。石の名前を呼んで石を呼び止めたかった。 けれど、テンは石を呼ぶ名を知らない。 ただ声にならない出来損ないの声だけが洩れていくだけ。 「「私はね、ずっと不思議だったのです。人間と言うのはどうして――――」」 少しずつ浮遊していく石は静かに語りだそうとしたが 「「何でもありません。少なくともテンは気付いている。 人間達だっていつかは気付くはずです。 知らん振りをしている人間だって、いつかきっと、私の代弁をしてくれるはず」」 「待って!」 「名前……あなたに名前はないのか……?」 石が笑った気がした。 「「テン、私は道具です。そんなものは必要ない」」 哀しかった。 テンはあれだけこの石と沢山の会話をしてきたと言うのに、 旅を共にしてきたのに、石の事を「便利な道具」としか見ていなかった。 彼に名前がないのならつけてあげればよかったのに。 旅の仲間として、名前を 「そんなの、悲し過ぎるじゃないか」 「「テン、私は嬉しかった。 私はいつも誰かの元に現れてはすぐに願いを叶えて消えてしまったから こんなに長い事一人の主の元にいたことなど今までなかった」」 「「あなたは、私を仲間としてみてくれていた」」 「嘘だ!そんなのは、嘘だ……っ」 「「テン」」 「「本当にありがとう」」
「ありがとう」 目次へ トップへ -----------------あとがき----------------- ようやく完結と相成りました。 とは言ってもただ最終話を書いたというだけで まだまだ書いて無い話もあるのでいつの日かお目見えすることもあるとは思いますが。 それでも一応は完結ということになりました。 これでようやく他の話が書ける!! 正直この作品はめちゃめちゃ苦戦しました。 なんとなく最後は考えていたのですが、淡々と話して終わりになりそうだったので ジョア氏をどう出そうかと悩みに悩みました。 とりあず人気の薄いこの話でしたが、つくねさんはお気に入りでした(笑) まぁ意識しないうちに色々なものをパクった作品でしたが(待て 大目に見てやってください; それでは。 |