生存者 いきるもの達の話

8.せかいのうんめい













「誰」

何者かの気配。

辺りは一転、深い闇に包まれていた。









「鍵を持つものよ」

「?!」

しわがれた声のような、
あるいは子供の声のような
あるいは機械のような。

男のような女のような

人のような獣のような

何重にも重なって出ているかのような声がした。

「―――誰?」

「我は、聖剣。世界を喰らう漆黒の聖剣―――」

ぼんやりとした光を携えて現れたのは、
いつも白亜を護っていてくれた剣。

「少女よ。お前は今危うい存在と化している」

「それは?」

「お前の魂は『世界』に定着できていない。

つまりは死に限りなく近い所なのだ」

「・・・・・・まさしく『あの世』ってわけか」

意外と冷静に、思ったよりもあっけなく受け入れられていた自分に驚きつつも
未だに剣がなぜ自分に語りかけてくるのか解らずにいた。

「我の事は知っているな?」

「世界を喰らう・・・この世界を浄化したそのものなのだろう?」

「そうだ。

では我が「聖剣」と呼ばれる由縁は知っているか?」

聖剣・・・

確かに世界を破壊する剣には似合わない名前ではあるが。

「世界を喰らう・・・というのは一側面でしかないのだ。

我は二つの姿を持つ―――」

黒く光る『世界を喰らう漆黒の聖剣』

そして

白く陰る『世界を創る白銀の聖剣』」

「世界を創る、だと?」

「女神は『漆黒』の力を使った。

己の責務を果たすために
それしか使えなかった

しかしお前は違う。

『白銀』の、世界を救うための力を扱うことが出来た――」

「待ってくれ、何を言っているのか分からない」

せかいをすくう?なんだそれは。どこのゲームだ?

「そして鍵を持つものよ、創世の力を使えるもの――」

「世界を、もう一度修正したいとは思わないか?」

修正

「我とお前の力をあわせれば、地球をもう一度治す事が出来る。

お前の住んでいた街が、国が、世界が全て治せるのだ」

「・・・・・・・・・どうして?」

「我が、それだけの力を持っている。

創世の力。

それは力だけではどうしようもないが、器を得る事で初めて形を成す。

その器たるお前に全ては託されたのだ」

全てが、治るのか?

今までどおりの世界に、

今はもう「過去」になってしまった思い出の世界。

それが、また、私の前に?







「迷う事など無いのだろう?

我を掴め。

我が声に身をゆだね、願いと共に我を掴むのだ

そのためにお前は存在している」

「一つだけ良いか?」

剣に反論の意志は無いようなので、少し視線を落としながら

「もし、私が世界を直すとしたら、私はどうなる?逆に、断ったら、私の魂と言うのはどうなる?」

「もし手を取ったのならば、我の力で満たされ、

神以上の力で「人」とは呼べなくなるが、お前のまま生きることが出来る。

しかし、取らなければ、

お前はこのまま死ぬ」

「――――――――」

「わかった」

白亜は、一歩、前へ踏み出した。





























目が、覚めた。

そこは相変わらず真っ白で、

しばらく自分がどうなったのかはよくわからなかった。

ただ、一つだけ、

あの剣が

「僕」の目の前にあった。それだけ。

「壱太・・・・・?壱太?!」

刻さんの優しくて悲しげな声。泣いている。

そして、剣はゆっくりと語りかけてきた





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